仕事を知るプロジェクト Project 1
PROJECT STORY 01
チームが一丸となり、
80代夫妻の事業承継を実現。
集合住宅などの設備全般を手がける、
従業員十数名の設備工事会社。
売り手の数倍の企業規模を持ち、
同じ地域で営業する設備工事会社。
ソーシング
経営者夫妻と面談を重ね、信頼関係を構築。
ソーシングにおいては、売り手企業から十分な情報を収集し、企業ごとに最適な事業承継スキームを構築することが、次の段階にあるマッチングの質を決定する。
後継者問題を抱えるこの設備工事会社の経営者夫妻はともに80代で、ITリテラシーは高くなく、メールもあまり利用されていなかった。この時大事にしていたのは、売り手企業に徹底的に寄り添うことだ。成約までの約7カ月間、週1回は訪問し、膝を突き合わせて2、3時間におよぶ面談を重ねた。物静かな社長に対して奥様はお話好き。お二人のさまざまな話を通じて経営者の人柄が知れ、この企業の沿革や独特の収益構造の理解も深まった。信頼関係の深まりとともに、重要な経営情報も収集することができた。
M&Aの対応は、通常の経営業に追加で負荷がかかるものだ。それゆえ、M&Aの対応がご夫妻の過度の負担となっていないかも常に気を配った。
マッチング
売り手のビジネスモデルを理解し、
適切な買い手を探索。膨大な資料準備も支援。
マッチングにおいては、M&Aによるシナジーを最大化できる買い手企業を探索することがカギになる。売り手企業のビジネスを深く理解し、買い手企業の未来のビジネスを創造する力が問われる。売り手企業は、地域の設備関連事業の協同組合を通じて利益率の高い工事を受注し、成長してきた。この売り手企業の独自のビジネスモデルや収益構造を初期段階でよく理解できたことが、マッチングに功を奏した。
ビジネスモデルの理解には財務・経営関連資料が必須になる。資料の準備と一言でいってしまえば容易に聞こえるが、その種類も量も膨大だ。売り手企業にとって大きな負担となり、検討がスムーズに進まないこともある。
私たちは、ご高齢の夫妻の負担は極力小さく抑えたい―そんな思いから、どのような資料がどのタイミングで必要かを入念に精査し、ご夫妻と綿密にコミュニケーションをとって資料準備を支援した。
並行して潜在的な買い手企業を探索していたが、売り手企業から適切な資料を得られたことで、比較的短期間で、同じ地方で事業展開する同業の企業から買収の意向を得ることができた。また、これらの資料によって、買い手企業はM&A後の人材の適正配置など中長期的な成長戦略を詳細に描くことも可能となった。
エグゼキューション
綿密なフォローで、最後まで伴走。
会社譲渡に係る主要な条件について売り手企業・買い手企業間で合意がされたのち、クロージングまでの実務では、専門知識をベースに買収監査のサポートや契約関連のドキュメント全般を作成する。この局面はM&Aの最終フェーズともいえるが、大きな決断を前に、売り手企業、買い手企業ともに緊張感が増す。
この時は、まずは買い手から、そしてクロージングの数日前には売り手から、「白紙に戻したい」との申し入れを受けた。M&Aの最終局面では、本当にこれで良いのかと自問自答を繰り返し、不安や迷いが膨張してしまうことがある。まさにこのケースがそうだった。仲介者として、まず当社にできることは、客観的な判断材料の提供だ。私たちはM&Aのメリット等の客観的な判断材料をまとめ直して伝えた。さらに、双方の声にあらためて耳を傾けることももちろん行った。
そこで活躍したのはキャリア20年以上のシニアコンサルタントだ。幾度も両社のトップと面談し、両者の描く未来が一致していることを丁寧に確認していった。一生に一度ともいえるシーンに、逡巡することは誰しもありうる。そんな場面で、これまでの経験値や膨大な分析結果などの客観的根拠をもって、そっと背中を押す。数多くM&Aを支援してきたベテランだからこそできることだ。これまで彼らが数多く見てきた“ポストM&Aの姿”―従業員がこれまで以上にいきいきと働き、事業が成長していく姿―を伝えることで、両者にM&Aの意義をあらためて認識してもらい、迷いを晴らすことができた。
M&Aのその後
売り手・買い手双方が、新たな一歩を踏み出す。
クロージングの時、ご夫妻がどこかほっとしたような表情をしていたのが印象的だ。その後、買い手企業から迎え入れた新社長は、従業員と積極的にコミュニケーションをとり、売り手企業から引き継いだ顧客基盤を維持しながら、自ら先頭に立って新規顧客開拓にも挑戦している。長年の経営の重荷を下ろした売り手企業の経営者夫妻は、この新しい会社の未来に期待を寄せている。